特に強い動機があったわけでもなく、単に「そういえば美学ってどんなものなのだろう」という気持ちのためと、何かのきっかけで以下の文献リストを見たので、最近は興味の赴くままに美学に関する入門書を読むなどしていた。
これまでに読んだのは以下の2冊:
- 佐々木健一 『美学への招待 増補版』 https://www.chuko.co.jp/shinsho/2019/07/191741.html
- 源河亨 『「美味しい」とは何か 食からひもとく美学入門』 https://www.chuko.co.jp/shinsho/2022/08/102713.html
どちらも現代美学の本。『美学への招待』の方は西洋近代美学への対抗として現代の美学 (著者は「新美学」と呼んでいる) を置き、そこに至るまでの、特に二十世紀に起きた芸術や美学を取り巻く状況や議論の変化を辿りつつ、美学にはどんな問いやトピックがあるかを具体的な作品や実生活での場面を例に紹介している。また、最後の二章では現代の美学における主要なテーマについて著者の見解を述べている。第十章以外では突っ込んだ議論や解説を避けており、教科書的な入門書を期待していた場合は残念という感想になるかも知れない。だが読み物としては読みやすいし引き込まれるような読書体験だったので、そういう意味で「招待」なのだろう。当初はそんなに数を読む予定ではなかったし、『「美味しい」とは何か』も読むつもりはなかったのだけど、読んでみて存外に面白かったので他にも色々読んでみるかという気持ちになった本だった。
『「美味しい」とは何か』は料理や飲食は芸術か (美学の対象として扱えるか、ということ) をテーマとして美学について紹介・解説している。入門的な解説としては素直で、食をテーマにしているのも現代アート作品みたいな「これ本当に美的なものとして扱えるの?」という点でなるほど現代美学の題材としてのいい感じに身近な例ですねという感じなので、いわゆる芸術方面に馴染みのない人にはとっつきやすい入門書のように思う。という感じで読みやすく分かりやすい良い入門書という風なのだけど、「食は芸術か」というテーマに対する議論の進め方や到達点が読んでて「そうか...?」ってなるところが気になった。ちょうど以下の書評がこの点について指摘・解説している (というかこの書評を先に読んでいて、実際に書籍の方を読んでなるほどねとなった、という時系列)。この書評の著者は冒頭の文献リスト (この本がお勧めされている) を書いた人で、「お勧めの本なのは変わらないんだけどこういう批判もできるよ」ということらしい。
他に以下の3冊が積まれている:
- 井奥陽子 『近代美学入門』 https://www.chikumashobo.co.jp/product/9784480075840/
- カロル・タロン=ユゴン 『美学への手引き』 https://www.hakusuisha.co.jp/book/b210728.html
- 西村清和 『現代アートの哲学』 https://www.amazon.co.jp/dp/4782802021
そんな入門本ばかり読んでどうするのだ、と思わないこともないが、今のところ真面目に美学を掘り進めていくつもりではなく、背景の確保、つまり美学という領域の輪郭を何となく掴むことができれば OK という考えなのでまあこれで良しとしている。もっと深く潜ってみたい、となったら冒頭の文献リストの他の書籍や『分析美学入門』 (https://www.keisoshobo.co.jp/book/b109885.html) あたりを読み始めるのではなかろうか。